「北陸一働きやすい病院」を目指す糸魚川総合病院が働き方改革で連休を取得しやすい職場へ●医事課チームはマニュアル作成方法を見直して9連休の取得が可能に●内視鏡チームは大腸内視鏡検査時の院内FAX廃止で病棟看護師の月間作業時間が9割減●手術室チームは手術ごとに立ち合い看護師の適正人数を見直し、平均3人から2.5人に削減●難易度の高い手術件数が31%増えたにもかかわらず、平均時間外勤務時間を16%削減の成果を実現
2006年創業以来、これまでに働き方改革コンサルティングを2,000社以上に提供してきた株式会社ワーク・ライフバランス(本社:東京都港区、代表取締役:小室淑恵、以下「当社」) は、2021年10月から、新潟県厚生農業協同組合連合会 糸魚川総合病院(所在地:新潟県、病院長:山岸文範、以下「糸魚川総合病院」)に働き方改革コンサルティングを提供してきました。このほど、医事課でマニュアルの整備・作成方法も見直しを行い9連休の取得が可能になったほか、内視鏡チームでは大腸内視鏡検査時の院内FAX廃止で病棟看護師の検査一覧表作成にかかる月間作業時間が84分から8分と約9割減を達成するなどの成果を上げました。また、医療業界では困難といわれる医師・看護師の連休取得を目指し、慣習で見直してこなかった手術室の立ち合い看護師の人数を、手術の難易度と看護師の習熟度により手術ごとに適正人数を見直して平均3人から2.5人に削減。2022年4月は難易度の高い手術件数が31%増えたにもかかわらず、平均時間外勤務時間を16%削減できました。
さらに、病院の経営幹部自らが働き方改革の必要性を強く発信、勤務する医師や看護師が働き方改革に取り組みやすい環境整備が進みました。
これらの成果をもとに、糸魚川総合病院は、働き方改革を進め長時間労働の改善やサステナブルな医療体制の確立によって、「北陸一働きやすい病院」として、医師・看護師が定着する病院を目指し、今後働き方改革の取り組みをさらに広げます。
【糸魚川総合病院が働き方改革を行った背景】
糸魚川総合病院は、38人所属する医師のうち7人が新幹線で県外から通勤するなど、県内で優秀な医師・看護師を確保することが難しい状況のため、医療現場特有の緊急対応を柔軟に行うことが難しくなっているという課題がありました。他方、糸魚川総合病院は糸魚川市の唯一の総合病院であり、市の中核医療を維持し、市民の健康を守るといった責務があります。そのため、優秀な医師・看護師の確保という挑戦に真摯に向き合い、医療従事者の働き方改革を急ぎ進める必要性がありました。
当社の働き方改革コンサルティングの導入以前より、山岸病院長自らが現場の医師・看護師に複数回のインタビューを実施し、現場が抱える働き方の課題と向き合ってきました。その結果、以前からの慣例で行われていて効率化できそうな仕事があることや医師や看護師、病院スタッフ同士のコミュニケーション不足や柔軟な役割分担ができていないといった問題が発生していることがわかりました。また、以前実施した新潟県厚生連アンケート調査では、働き方の問題から「当院で仕事をしていきたいか?」という質問に対して、賛同意見が他の業種と比べ低めであるといった結果も出ていました。
こうした問題や環境を改善するべく、2021年2月に働き方改革に関する意識改革を開始、働き方改革に関する意識改革講演を実施しました。さらに2021年10月からは医事課チーム、内視鏡チーム、手術室チームの3チームを対象に、株式会社ワーク・ライフバランスによる「働き方改革コンサルティング」を導入しました。
【働き方改革コンサルティングについて】
当社が提供する「働き方改革コンサルティング」は、約8か月間で働き方改革に必要なノウハウを現場に定着させる伴走型のコンサルティングサービスで、民間企業や行政、医療機関など様々な業種業態・勤務形態の組織に提供しています。
当社の働き方改革コンサルティングは、各社員や所属メンバーの時間の使い方の可視化や、チームでの課題整理や働き方の見直しを促す「カエル会議」を行うことで、時間当たりの生産性向上や私生活の充実を実現し、イノベーション創出につなげていくことが特徴です。指導型のコンサルティングではなく、コーチング技術を用い、現場が自発的に考え始める仕組みを提供します。2006年の創業当時より提供を開始、それ以来、2,000社の企業の働き方改革に伴走し、残業時間半減や労働生産性3割増、新規事業の創出といった成果につなげてきました。2020年に発生したCOVID-19影響下においても、オンライン会議システム等を用いて継続的な取組みを行う企業がほとんどです。
【糸魚川総合病院における働き方改革コンサルティングの取組み内容と成果】
2021年10月から開始した働き方改革コンサルティングでは、看護師・内視鏡担当医師混合の内視鏡チーム、医師・看護師・臨床工学技士混合の手術室チーム、事務職員の医事課チームの計3チームにて働き方改革先行トライアル実施しました。病院として、働き方改革の優先順位は高いため、COVID-19の対応と並行して、オンラインも活用し働き方改革を継続してきました。
取り組み内容としては、チームごとに課題を見つけ解決策を議論する「カエル会議」の実践が主です。具体的には、自分自身、チームでの働き方を振り返り、本来の主業務にあてる時間を増やし、時間の効率化とお互いの業務を助け合い、チームで仕事を進められるようにしました。また、カエル会議内で行われる「付箋ワーク」を導入したことで、みんなの意見を出し合い、職種に関係なく、議論できる会議へと変えました。
各課の主な取組みおよび成果は以下の通りです。
<医事課チーム>
通常業務と平行して残業は増やさず、マニュアルの整備、チェックリストの運用を行い、9連休取得を実現
<内視鏡チーム>
大腸内視鏡検査時に院内FAX廃止で、看護師の情報伝達の月間作業時間280分(4時間40分)削減を実現
大腸内視鏡検査時の院内FAX廃止し、システム活用したことで、メモタックに手書きで書き写ししていた検査一覧表作成にかかる月間作業時間が84分から8分へ、約10分の1に減少
医師のPHS対応のルールを決め、院内へ周知したことで、医師はPHS対応で診療や検査を中断することなく集中して実施
<手術室チーム>
手術内容に合わせて、手術立合い看護師人数を見直し、平均3人から5人に削減し、2022年4月は難易度の高い手術件数が31%増えたにもかかわらず、平均時間外勤務時間を16%削減
各診療科の医師が管轄する手術機械・材料を断捨離期間を設けて整え、機能的な空間を実現
また、病院長自ら機会があるごとに働き方改革の必要性を強く発信したほか、
会議時間の見直し
患者家族への病状説明時間帯の見直し
病棟面会時間の短縮
日当直・平日ER当番の定時での交代の徹底
一人医長である眼科手術数の抑制
定年再雇用医師による救急担当日を増やしタスクシフトを推進
中央材料室業務の外部委託
など12の具体的な取り組みを実施し、勤務する医師や看護師や職員が働きやすい環境整備が進みました。
今後は、2021年度の成果を礎に、病棟での働き方改革コンサルティングを提供し、より一層の働き方改革の進化と病院内の連携の強化、相互支援する意識の醸成・拡大による自律的な働き方改革を広げていく予定です。このほかにも、透析担当医師の勤務時間シフト制の導入や、中央材料室業務の外部委託で手術室スタッフの業務の効率化を図れたことから午前中からの手術の実施、特定医師の院外勤務日減少による労働時間の抑制、クラークによる初診患者のカルテ問診記載などをすすめ、医師や看護師が働きやすい職場と、持続可能な医療体制を両立し、地域の患者さんに安心していただける医療環境の提供を行っていきます。
■「働き方改革コンサルティング」を通した変化に関するコメント
新潟県厚生農業協同組合連合会 糸魚川総合病院 病院長 山岸文範様
病院には「医療をとおして地域社会へ貢献する」という崇高なミッションがありますが、それを実行するうえで医師や看護師の自己犠牲に甘えてきた面があります。しかし労働者人口の減少が目で見えるようになった今、患者さんと職員の幸せを両立させる職場として病院を成長させなければなりません。働きかた改革はとても良いきっかけです。当院はワーク・ライフバランス社のコンサルティングのもと、他の地域医療病院に先駆けすべての職員に対する働きかた改革を進めています。
得られた成果は二つあります。
一つはコンサルティング中のカエル会議そのものの効果です。今まで会話の少なかった医師と看護師などの間で真剣なコミュニケーションがとられたこと、技術職である若い看護師が医師を含めたチームの中でリーダーシップを発揮する場があったこと、医師が他の職種の労働時間や環境を心配し続けることで改革を進めようとしたこと。
もう一点は報告会で示された成果そのものです。医事課が9連休取得という明確な目標を提示し業務の効率化や互いのサポートを進めたこと、煩雑な仕事をシンプルにする断捨離の実行、必要だと思い込んでいた部署間FAXの廃止など今まで無理だと決めつけていたことへの取り組みが成果として示されました。
とは言っても改革は始まったばかりです。年輪を重ねるように一歩ずつ「北陸一働きやすい病院」という大きな幹へ育てたいと思います。今回は最初の年輪として記念すべき改革になったと考えております。
これ以降の記事はPDFや当社ホームページをご覧ください。
https://work-life-b.co.jp/20220519_19735.html