【セミナーレポート:空き家問題解決に向けたベンチャー企業との「公民連携」最前線】自治体が抱える課題や公民連携の活用事例を、相続・利活用/売却・除却の視点から解説 ~空き家に課題を抱える全国104自治体181名が参加~
解体工事の一括見積もりWebサービス「クラッソーネ」を運営する株式会社クラッソーネ(愛知県名古屋市、代表取締役:川口哲平、以下「当社」)は、行政・自治体職員と事業者向けに社会問題化する空き家に対し、今必要な施策について解説する無料オンラインセミナーを開催しました。
【セミナー概要】
■開催日時
2022年5月10日(火) 15:00~16:30
■主催
・株式会社AGE technologies
そうぞくドットコムの企画・開発・運営・販売
・FANTAS technology株式会社
オンラインとオフラインを融合する※「FANTAS platform」事業を運営
(※Online Merges with Offline(OMO))
・株式会社クラッソーネ
解体工事の一括見積もりWebサービス「くらそうね」を運営
■登壇者
・埼玉県横瀬町長 富田 能成氏
・愛知県南知多町 空き家対策係長 堤田 健太氏
・兵庫県神戸市 安全対策課 空家空地指導担当係長 有井 美由紀氏
安全推進係長 高橋 誠二氏
1)セミナー開催の背景
総務省が2018年9月30日に発表した平成30年住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家は849万戸、全住宅に占める空き家率は13.6%となり、過去最高となっています。さらに、2033年に現在の2倍弱の25.1%、2038年には30.5%(※1)になる可能性があるともいわれ、「空き家問題」として社会課題に挙げられ注目されています。
空き家問題解決に向けた取組みは、空き家バンクの活用など各自治体で対策が進められています。しかし、管理不全空き家を含む空き家数が増加するなかで、個々の事情を抱える所有者に適切な対応を促すことや、自治体外の遠方の所有者への周知が難しい等、職員数や予算に限界のある自治体のリソースのみで、問題を解決することが難しいという声が挙がっています。こうした背景から、国土交通省は平成30年度より空き家対策モデル事業(※2)の公募を開始し、空き家対策の一層の加速化を図っています。
これまで以上に行政・自治体・民間が協力して空き家問題へ取り組むことが求められる一方で、それらの取組みへの課題が多く、対策が進みにくい現状です。そこで、空き家問題に対して公民連携の取組みを行っているベンチャー企業3社が共同で、「空き家施策における公民連携」をテーマとしたセミナーを実施する運びとなりました。
(※1)(※2):添付のpdfファイルよりご確認ください
2)自治体の空き家対策・公民連携についての取組み事例
■埼玉県横瀬町長 富田氏:「日本一チャレンジする町の官民連携の取組み」
富田氏は、人口減少などの自治体が抱える課題は、自治体の持つ資源だけでは解決することができない状況であり、外部から「ヒト・モノ・カネ・情報」を流入させて活性化を促すことが必要だと提言し、横瀬町独自の「よこらぼ」という官民連携プラットフォーム事業を紹介しました。
空き家増加という課題に対する官民連携の取組みとしては、FANTAS technologyとの連携で「空き家の可能性見える化プロジェクト」を行っています。町で把握している空き家所有者に対してダイレクトメールを送付し、希望者に無償で物件調査を行うという取組みです。実際に13件の物件調査を行い、2件が賃貸としての活用に繋がり、4件が賃貸・売却の対応に向けた前向きな検討に至っているという実績があり、富田氏は「一部空き家の流動化促進を行うことができた」と成果を共有しました。
■愛知県南知多町 空き家対策係長 堤田氏:「空き家×公民連携=持続可能なまちづくり」
南知多町では空き家バンクやそれに連動した各種支援制度の実施など、空き家対策のための取組みを複数行っていますが、人口減少により空き家の増加だけでなく財政状況の悪化も想定され、今後空き家対策を続けていくことすら難しい状況にあります。そこで堤田氏は、空き家対策へかけることができる予算や人員も限られている中で、行政と民間が新しい価値や解決策を「共」に「創」る「官民共創」が必要であると提言しました。
南知多町における「官民共創」による空き家対策事業については、物流企業のネットワークを用いた「空き家見守り社会実験」による遠方の空き家所有者の支援や、リユース・リサイクルに携わる企業との「空き家のお宝発掘社会実験」による空き家内の不用品処分の支援の活動など、幅広い分野における取組みを行っています。空き家除却に関する当社との連携協定の取組みでは、一括見積もりサービスにより解体費用が想定の4割以上削減されたことで所有者が解体を決断し、特定空き家の行政代執行を回避した実績があると紹介しました。
3)ベンチャー企業の公民連携の取組み事例
■相続手続きのスムーズ化で空き家の適切な管理推進に寄与(AGE technologies伊藤氏の講演を一部抜粋)
空き家となってしまう不動産の取得経緯のうち、半数を超える55%が相続による取得であることから、伊藤氏は空き家問題解決には「相続」の課題を押さえることが重要だと述べました。相続の課題については特に、手間と費用がかかるという理由で手続きがそのまま放置されてしまうことが問題となっています。
そこで伊藤氏は、相続手続きを誰でも簡単にできるWEBサービス「そうぞくドットコム」を紹介しました。このサービスにより、必要書類の取得や申請書の作成をオンラインで支援することで、正しい相続登記を促進し、管理不全な空き家や所有者不明土地の対策に繋げることができると、想定効果を紹介しました。
■空き家の価値の「見える化」で所有者の行動を促進(FANTAS technology森山氏の講演を一部抜粋)
空き家問題の課題の中心は、空き家所有者が「どうしたらよいかわからない」「どうせ売れない」という思いから行動を起こしていない点にあるとし、正しい空き家の価値を所有者に伝えることで、利活用や売買などの検討を進めてもらう『地域の空き家の可能性「見える化」プロジェクト』を紹介しました。
実際に横瀬町など複数の自治体と連携しプロジェクトを行うことで、放置空き家75件のうち32件が空き家バンクへ登録するなど、空き家の利活用の促進に寄与していると、実績を共有しました。
■空き家所有者の「わからない」の解消で空き家除却を促進(クラッソーネ山田の講演を一部抜粋)
空き家の除却に関して、費用・進め方・工事会社選定などの情報不足により不安を抱えている空き家所有者は多くいます。そこで弊社山田は、クラッソーネのIT技術や解体工事に関して蓄積されたデータや経験を活かし、所有者の持つ課題に合わせて支援や啓発を行うことを提案しました。
実際に25を超える自治体との連携協定では、簡単に解体工事の概算費用を調べることができる「解体費用シミュレーター」やフライヤーによる情報提供、工事会社の紹介を行っており、協定締結後に空き家除却に至った実例が複数あると紹介しました。
4)トークセッション:「空き家問題解決に向けた公民連携について」
兵庫県神戸市 安全対策課の有井氏、高橋氏を迎え、公民連携に関して自治体職員が抱える疑問や課題について横瀬町長 富田氏、南知多町 堤田氏とともにトークセッションを行いました。
トークセッションでは、民間事業者と連携して空き家対策を促進するにあたっての懸念とその解消手法について、各自治体の事例が共有されました。南知多町では、民間との連携協定において、行政が特定の企業と連携を図ることは公平性に欠けるのではと懸念がありましたが、特定の企業に限定せず広く提案を受け入れることで公平性は担保でき、また、予算を使わず町民のための取組みができるため、「やらない理由はない」と庁内の同意を得たという経験を明かしました。また横瀬町長 富田氏は、法令の規制がある中でも、自治体も寄り添う意識で、柔軟な対応をすることが公民連携を行う上で重要だと述べました。
行政だけで街づくりをしているわけではなく、すべての課題を行政で解決する必要はないとし、空き家問題の解決に向けて行政と民間が協力することの重要性が示されました。
5)参加社数、参加者の声
a.参加人数
104自治体 181名
メディア参加者 16名
b.参加者の声
・他自治体の取組みが非常に参考になりました。特に自治体のトップが意志を持って空き家対策に取り組んでいる姿が印象的でした。
・空き家対策を推進していくにあたって、今後、官民連携は重要だと考えていますが、「何から始めるか」「ほかの自治体の状況はどうか」「どんな事業者がいるか」といった話が聞けて、大変参考になりました。
・凝り固まった考えでなく、官民連携を行うことで官民双方のメリットを合わせることができ、今後よりそれがまちづくりには大切だと感じました。
c.参加者の満足度
今回参加した約200名のうち、91名からアンケートの回答を得ました。その結果、「大変満足(36.3%)」または「やや満足(58.2%)」と回答した参加者は94.5%となりました。
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レポートの詳細は、添付のpdfファイルよりご確認ください。
また、セミナー動画、掲載画像、当日の資料、セミナーの様子については以下のリンクからご確認いただけます。
https://drive.google.com/drive/folders/1dm40DqHksLLyjYYrrO97BC7rYsAMBHbg?usp=sharing
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