【管理栄養士・栄養士580人に聞いた物価高騰による施設等の給食への影響調査】約7割が物価高騰の影響によるメニュー開発や献立についての悩みあり。「たんぱく質」摂取に苦労、たまごや魚の値上がりを受けメニューを工夫~鯖やオレンジ、バナナの頻度を増やし、肉を豆腐にするなど対策するも同一メニューによるマンネリ化に懸念~
株式会社エス・エム・エス(本社:東京都港区、代表取締役社長:後藤夏樹、東証プライム、以下「当社」)は、管理栄養士・栄養士向けコミュニティ「エイチエ」(URL:https://eichie.jp/)を提供しており、この度、全国の管理栄養士・栄養士580人を対象に、「物価高騰による施設等の給食への影響調査」を実施しました。
【主な調査結果】
1.直近1年程度の食材の価格については99.6%が値上がりを実感
管理栄養士・栄養士のほぼ全数が値上がりを実感していた。
2.物価高騰の影響によるメニュー開発や献立について約7割が悩みありと回答
管理栄養士・栄養士の3人に2人が悩みを抱えている実態が明らかになった。
3.理想的な給食を提供するためにはメニュー開発のスキルが足りないと半数以上が回答
次いで「時短できる調理方法など工夫するスキル(22.8%)」「仕入れ先の開拓力(21.0%)」「追加予算をもらうための交渉力(20.2%)」「栄養食品に関しての知識(20.2%)」が上位となった。
4.物価高騰については8割以上が職場内で相談できているという実態
年齢別では、30代以上の半数以上は経営者や責任者に直接相談できていることがわかった。
5.9割以上がたまご、魚類の値上がりを実感
油脂類、乳製品、調味料類、牛乳、パン類、肉類、冷凍食品、野菜、果物、麺類は8割以上が「値上がりした」と回答。そのほか、冷凍野菜、菓子類など米以外の食材についても半数以上が値上がりを感じている。
6.たまごは2人に1人、果物は4人に1人、魚類は5人に1人が使用頻度を減らしている実態
一方で、冷凍食品、冷凍野菜の使用頻度は2割程度増え、肉、牛乳などの使用頻度はほぼ変わらない結果となった。
7.使用頻度を増やしたい食材1位はたまご(42.1%)、2位は果物(41.9%)という結果
魚類(36.6%)、野菜(31.9%)も使用頻度を増やしたい食材の上位となった。
8.食材価格の変化によって起きたことは「同じ食材、メニューを使う頻度が増えた(50.0%)」が最多
次いで「仕入れ先を変更した(39.7%)」「提供している給食の質への自身の満足度が下がった(32.6%)」が上位だった。
9.物価高騰により栄養素基準値を満たすのに苦労するようになった項目は「たんぱく質(37.1%)」が最多
次いで「エネルギー(30.3%)」、「カルシウム(19.1%)」の提供に苦労しているという結果となった。
【コメント抜粋】
①物価高騰により具体的に変更した食材について
・牛肉は使わなくなった、単価の高い魚は使う回数が減り、鯖の頻度が増えた(宮城県、保育園勤務、30代)
・サンマ、鮭を減らしてホキ、メルルーサなどの白身魚に一部変更(秋田県、給食委託会社勤務、30代)
・梨、スイカなど季節ものの果物が減り、バナナやオレンジが増えた(埼玉県、保育園勤務、30代)
・たまごが品薄になり、たまご以外でたんぱく質を満たすことが難しくなり、おからパウダーやスキムミルクで補うなどした(兵庫県、介護施設勤務、40代)
・肉料理を減らして豆腐・大豆製品を使用する料理を多くした。豆腐だけだと物足りないので、ひき肉でかさましをするなどの工夫を凝らしている(千葉県、保育園勤務、30代)
・油の高騰で、揚げ物の回数を減らしたり、スチコン(スチームコンベクションオーブン)での揚げ工程を増やしたりした(埼玉県、介護施設勤務、30代)
・発注は人数ギリギリの設定にしている(東京都、保育園勤務、30代)
・食材は変えずに業者を変えて価格を抑えた(静岡県、介護施設勤務、30代)
・たまごの高騰により、たまご製品の既製品の取り扱いが減り、朝食のレパートリーが減った(神奈川県、介護施設勤務、20代)
・出来る限り生の肉魚をやめ冷凍に切り替えたが味や食感が悪くなり、てきめんに苦情が出るようになりクレームの多さに委託のモチベーションが下がり改善する姿勢が無くなった(愛知県、介護施設勤務、60代)
②理想的な給食を提供するために足りないことについて
・スキルも必要だが献立を実施するだけの人員不足が深刻すぎる。それをカバーしているとスキルを磨く時間もない(福岡県、給食委託会社勤務、30代)
・直営給食だが、スタッフの高齢化による作業効率の低下が深刻。また衛生面の知識、実行能力も落ちてきているため、生野菜、調理後加工が必要なメニューは提供しづらい(茨城県、病院勤務、30代)
・施設運営において給食部門ではなく、介護職員の人材確保に経費が掛かり過ぎるので食材費に予算がさけない。やはりお金に余裕が有れば魅力的なメニュー作りに繋がると思う(静岡県、介護施設勤務、60代)
・食材費だけではなく、光熱水費も高騰しており、施設内での予算を確保するのが難しい(東京都、介護施設勤務、40代)
・食材原価を抑える献立の発想力や食材の知識がより欲しい(東京都、給食委託会社勤務、30代)
・管理者の給食業務、栄養士業務への理解の関心、他職種のコスト管理(大阪府、介護施設勤務、50代)
③物価高騰の対策として行っている工夫について
・予定食数と実施食数の差(ロス)を少なくする(東京都、介護施設勤務、30代)
・食材よりもビニール袋などの消耗品の無駄を見直したり、規格や仕様を変更したりした(北海道、病院勤務、30代)
・たまごトッピングのメニューが多かったので、肉魚メニューを増やしたら、今までマンネリ化していたメニューが新しいメニューになったことで逆に新鮮味があったようで、反応が良かった(東京都、給食委託会社勤務、20代)
【総括】
近年、世界的に物価が上昇し、日本も2020年を基準とした場合、2023年7月時点では105.7%となるなど総合物価指数は上昇を続けています(※)。物価の高騰により管理栄養士・栄養士の業務にも影響が出ており、今年6月には全国自治体病院協議会が「社会保険診療報酬に関する改正・新設要望書」を、7月には四病院団体協議会が「入院中の食事療養に関する要望書」を厚生労働省に提出するなど、高騰している食材費を補填するための働きかけが行われています。このような環境の中で、給食のコスト管理に関わる管理栄養士・栄養士がどのような工夫を行っているかを調査するために、「物価高騰による施設等の給食への影響調査」を実施しました。
調査の結果、ほぼ全員の管理栄養士・栄養士が食材の値上がりを実感し、約7割がメニュー開発や献立について悩んでいるということがわかりました。理想的な給食を提供するためには「メニュー開発のスキル」が足りないと半数以上が回答し、次いで「時短できる調理方法など工夫するスキル」が足りないという回答が2割以上となりました。また、仕入れ先の開拓力や追加予算をもらうための交渉力といった、ビジネススキルについても課題を感じていることがわかりました。
物価高騰による食材価格の変化によって起きたことについては、同じ食材、メニューを使う頻度を増やす、仕入れ先を変更するといった対策が上位の回答であり、予算を増やさないように現場の管理栄養士・栄養士が工夫している姿勢が見えました。しかし、提供している給食の質に対し、提供者である自分自身の満足度が下がったと3割程度が回答しており、改善策について悩んでいる様子が伺えます。
食材別の調査では、たまご、魚類、肉類、油脂類、乳製品、調味料類、パン類など米以外の多くの食材に対してほとんどの回答者が値上がりを実感し、特にたまご、魚類については9割以上が値上がりを感じていました。また、たまごや果物の高騰が給食に与える影響は大きく、たまごは2人に1人、果物は4人に1人が使用頻度を減らしている実態が明らかになりました。使用頻度を増やしたい食材の上位がたまごや果物であることからも、これらの食材をメニューに取り入れたいものの使用頻度を下げざるを得ない状況が推測され、管理栄養士・栄養士の栄養やレパートリーに対する苦悩が垣間見えます。コメントでは食材の活用についての工夫も多く見受けられ、サンマ、鮭をホキ、メルルーサ、鯖などに変える、季節ものの果物を減らし、バナナやオレンジを増やすといった具体的な工夫も確認できています。
管理栄養士・栄養士は各職場に1名しか配置されていないという場合も多く、職場で悩みを相談できていないのではないかと予測していましたが、8割以上は職場内で物価高騰についての相談ができており、かつ、30代以上の半数以上は経営者や責任者と相談ができていました。しかし、人員不足や予算不足を訴える声や、管理者の関心が不足しているという声もあり、自身のスキルアップで物価高騰を乗り越えようとするものの、環境の改善についても望んでいることがわかりました。経営者、責任者との相談の機会は得られるものの、話しきれていない、もしくは解決できていないということが予想されるため、施設の給食の改善や、管理栄養士・栄養士の悩み解消のためにはもう一歩寄り添ったコミュニケーションが必要である可能性が示唆されました。
※:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)7月分(2023年8月18日公表)」(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)より
【調査結果詳細】
1.直近1年程度の食材の価格については99.6%が値上がりを実感
Q.直近1年程度のなかで、給食の食材の物価高騰についてどのように感じていますか?(n=580)
管理栄養士・栄養士のほぼ全数が値上がりを実感していた。
2.物価高騰の影響によるメニュー開発や献立について約7割が悩みありと回答
Q.物価高騰の影響によるメニュー開発や献立についての悩みはありますか?(n=580)
管理栄養士・栄養士の3人に2人が悩みを抱えている実態が確認できた。
3.理想的な給食を提供するためにはメニュー開発のスキルが足りないと半数以上が回答
Q.理想的な給食を提供するために足りないと思うことは何ですか?(複数選択可、n=580)
次いで「時短できる調理方法など工夫するスキル(22.8%)」「仕入れ先の開拓力(21.0%)」「追加予算をもらうための交渉力(20.2%)」「栄養食品に関しての知識(20.2%)」が上位だった。
4.物価高騰については8割以上が職場内で相談できているという実態
Q.物価高騰の影響について、職場内の誰かと相談はできましたか?(n=580)
Q.具体的に誰と相談をしましたか?(複数選択可、n=580)
年齢別では、30代以上の半数以上は経営者や責任者に直接相談できている。
5.9割以上がたまご、魚類の値上がりを実感
Q.それぞれの食材の価格変化について教えてください。(n=580、「わからない」の回答はグラフから省略)
油脂類、乳製品、調味料類、牛乳、パン類、肉類、冷凍食品、野菜、果物、麺類は8割以上が「値上がりした」と回答。そのほか、冷凍野菜、菓子類など米以外の食材についても半数以上が値上がりを感じている。
6.たまごは2人に1人、果物は4人に1人、魚類は5人に1人が使用頻度を減らしている実態
Q.直近1年程度のなかでのそれぞれの食材についての使用頻度を教えてください。(n=580、「わからない」の回答はグラフから省略)
一方で、冷凍食品、冷凍野菜の使用頻度は2割程度増え、肉、牛乳などの使用頻度はほぼ変わらない結果となった。
7.使用頻度を増やしたい食材1位はたまご(42.1%)、2位は果物(41.9%)という結果
Q.それぞれの食材の希望使用頻度を教えてください。(n=580、「わからない」の回答はグラフから省略)
魚類(36.6%)、野菜(31.9%)も使用頻度を増やしたい食材の上位となった。
8.食材価格の変化によって起きたことは「同じ食材、メニューを使う頻度が増えた(50.0%)」が最多
Q.物価高騰による食材価格の変化によって起きたことを教えてください。(複数選択可、n=580)
次いで「仕入れ先を変更した(39.7%)」「提供している給食の質への自身の満足度が下がった(32.6%)」が上位だった。
9.物価高騰により栄養素基準値を満たすのに苦労するようになった項目は「たんぱく質(37.1%)」が最多
Q.物価高騰により栄養素基準値を満たすのに苦労するようになった項目はありますか?(上位3つを回答、「特になし」「わからない」を選択した場合は、いずれか1つのみの解答。n=580)
次いで「エネルギー(30.3%)」、「カルシウム(19.1%)」の提供に苦労しているという結果となった。
■調査概要
「物価高騰による施設等の給食への影響調査」
・調査期間:2023年7月24日(月)~2023年8月2日(水)
・調査対象:給食のコスト管理業務を行っている全国の管理栄養士・栄養士580名
・調査方法:Webを使用したアンケート
【「エイチエ」について】
管理栄養士・栄養士向けコミュニティ。献立を投稿・閲覧し、コメントができる献立レポ、栄養士業務に特化したQ&A、求人情報や働き方などのコンテンツを提供。管理栄養士・栄養士を多方面からサポートしています。
URL:https://eichie.jp/
【株式会社エス・エム・エスについて】
2003年創業、2011年東証一部上場、2022年4月より東証の市場区分変更によりプライム市場へ移行。「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」ことをミッションに掲げ、「高齢社会×情報」を切り口にした40以上のサービスを開発・運営しています。
名称:株式会社エス・エム・エス
所在地:東京都港区芝公園2-11-1住友不動産芝公園タワー
代表者:代表取締役社長 後藤夏樹
会社設立:2003年4月
資本金:23億1,518万円(2023年3月31日現在)
従業員数:連結3,703人、単体2,343人(2023年3月31日現在)
事業内容:高齢社会に求められる領域を、医療・介護・ヘルスケア・シニアライフと捉え、価値提供先であるエンドユーザ・従事者・事業者をつなぐプラットフォームとしての情報インフラを構築し、40以上のサービスを展開
URL:https://www.bm-sms.co.jp/