「正解」はAIが出す時代になぜ「葛藤」が必要か。 労働と遊びが融合する仮想都市「PLAY-WORK TOWN!」で、元生徒会長が叫ぶ「失敗する権利」と主体性を取り戻す挑戦
13年間にわたりのべ6,000人以上のこどもの「自由」と「失敗」を保障してきた任意団体PLAY-WORK実行委員会(新宿区)は、2026年、新たな社会実験を開始します。
事業をこども若者の手へと委ねるべく、初めて3人の高校生・大学生インターンを運営の中心に招き入れました。
しかし、そこで浮き彫りになったのは、現代の若者を縛る「正解への強迫観念」と「同調圧力」でした。
彼らがこどもと共に主体性を取り戻そうともがく泥臭いプロセスを通じ、効率化が進むAI時代にこそ必要な「非効率な学び」の価値を社会に問います。
「自分の意見を言っていい」その確信が今の私を創った。
かつて小学生として「遊ぶように働くこどもだけのまち(PLAY-WORK TOWN!)」に参加していた高橋夢叶さん(高校2年生)。現在、運営インターンとして戻ってきた彼女の原点には、この場所で得た「正解のない問いに自ら挑む」という強烈な原体験がありました。
◼︎「自分の意見を言っていい」という感覚があった。元参加者の高校生が設計者側として戻ってきた理由
そこで得たのは、失敗や対立を恐れずに自分の意見を伝える全能感でした。
「あの感覚を今のこどもたちにも届けたい」という一心で、現在は設計側に回っています。
彼女が目指すのは、こどもたちの声が一過性の体験で終わらず、地域社会へと波及していく仕組みづくりです。
彼女は今、自分を育ててくれたこの事業の価値をより多くの人に届けるため、自らの母校である小学校でのワークショップを企画。高校生が学校現場に働きかける姿は、主体性を持って生きることの眩しさを体現しています。
彼女が放つエネルギーは、今回参加するこどもたちもまた「自分も夢叶さんのようになれるかもしれない」という、未来への期待感へと繋がるでしょう。
その一方で、今まさにその「主体性」の産みの苦しみに直面している学生たちがいます。
◼︎「空気を読む」大学生がなぜ「起業」を語るのか。若者の所得を増やしたいという思いの裏にある自立への葛藤
大学3年生の中井川源征さんが本プロジェクトで担うのは、こどもの所得を増やすための「金融・起業教育」の設計です。
実際の社会でも「若者の所得を増やしたい」という志を持つ彼ですが、その手段が「起業」に限定されたこのまちのルールを前に、自分自身の壁に直面しています。
「このPLAY-WORK TOWN!で所得を伸ばすには、自ら人と出会い、交渉する『起業』が不可欠。でも、空気を読みすぎて意見を飲み込んでしまう自分にできるのか」——。
それでも彼がこの設計にこだわるのは、子どもたちに、将来社会に出たときに自分自身を守る「自由の武器」を手にしてほしいと願っているからです。
このまちでの起業は、単なる金儲けの手段ではありません。誰かの顔色を伺うのではなく、自分の創意工夫を誰かに届け、正当な対価を得る。その過程で「自分でも稼げた」という喜びを見出すことこそが、同調圧力に屈しない自立心の種になると、彼は自らの葛藤を通じて確信しています。
「つい空気を読んで損をしてしまう自分の弱さと、どう向き合うか」。
中井川さんは教える立場ではなく、その弱さを抱えた一人の人間として、こどもたちの隣に立ちます。成功のメソッドを授けるのではなく、自分らしく価値を生み出す難しさと、それを超えた先にある「稼ぐ喜び」を共に分かちあう伴走者として、現場に踏み出そうともがいています。
◼︎「元生徒会長」という呪縛。周囲の期待に依存した“いい子”が、「失敗する権利」を叫ぶ理由。
大学3年生の山口寿々音さんは、これまで「大人が望む正解」を演じ続けてきました。
中学では生徒会長を務め、周囲からは常に「しっかり者」「理想のリーダー」と評されてきた彼女。しかし、その裏側にあったのは、他者からの評価が自分の価値のすべてになってしまった若者の、切実なまでの葛藤でした。「失敗したら、誰にも頼られなくなる。私の居場所がなくなる」——。そんな恐怖が、彼女の主体性を長年縛り続けてきたのです。
本プロジェクトの運営中、山口さんは大きな壁に突き当たります。高い目標を掲げながらも、失敗を恐れるあまり「できない」と言い出せず、一人で抱え込んで締切を引き延ばしてしまったのです。期待に応えられなくなった瞬間に自分の価値が崩壊することに恐怖を感じました。
現在もその恐怖が完全に消えたわけではありません。しかし、山口さんはその「痛み」を、こどもたちと向き合うための最大の力に変えようとしています。
「良い子でいなさい」「失敗しちゃダメ」。
自分のように大人の顔色を伺い、期待に応え続けていつか苦しくなってしまうこどもたちがきっといる。
彼女が本番でこどもたちに手渡したいのは、かつての自分が最も欲しくても得られなかった、「失敗していいよ」「一人でできないことは、みんなでやろう」という、失敗と依存を許す権利です。山口さんは、こどもたちが安心して「正解のない道」を選べる場を守ることで、自らもまた「しっかり者」という仮面を脱ぎ捨て、本当の主体性を取り戻そうとしています。
◼︎主体性は「教えられない」 13年が示すこと
PLAY-WORK実行委員会は2013年の設立以来、のべ6,000名超のこどもたちに「自由に遊ぶ権利」「意見を尊重される権利」「失敗を許される権利」を保障する場を提供してきました。
主体性は、教えられるものではありません。本物の問題が目の前にあり、自分で動くしかない環境に置かれたとき、初めて育ちます。
今年加わった3人のインターンの変化は、まだ途中の段階です。しかし、この答えが出ない中での葛藤こそが、主体性が芽生える唯一の土壌であると私たちは確信しています。
インターンの若者たちは、決して『完璧な指導者』ではありません。自分自身の弱さに悩み、あるいは過去に得た成功体験を確信に変えようと、こどもたちと同じ目線で泥臭く試行錯誤を続ける立場です。
彼らの姿は、正解のない時代を生きるすべてのこどもたち、そして大人たちへのメッセージです。13年目の『PLAY-WORK TOWN!』は、この3人と共に失敗を恐れず、自分の世界を変えていける場をこの春に豊島区南長崎に作り出します。
【イベント概要】
イベント名:Let's make PLAY-WORK TOWN! 2026 〜遊ぶように働くこどもだけのまち
会場:ターナーギャラリー(豊島区南長崎6-1-3)および南長崎はらっぱ公園の一部
対象:小学1年生〜中学3年生(2026年3月時点)
本番:2026年3月26日(木)〜4月4日(土)の7日間
※3月29日・4月1日・2日はお休み
参加費:1日1,000円(税込)
助成:アーツカウンシル東京[地域芸術文化活動応援助成]
公式サイト:https://playworktown.wixsite.com/-----------2023-toky
【本件に関する取材・お問い合わせ】
PLAY-WORK実行委員会
Email: 2026@tinkeringtown.jp
電話: 090-1273-1774(木〜日 10:00〜18:00 担当:さかた)
団体住所: 東京都新宿区西落合2-9-7-102
【取材のお願い】
学生インターン本人へのインタビュー、活動現場の撮影など、随時受け付けております。
3月10日に開催される「母校ワークショップ」の取材も可能です。
SNSのDMまたはEmailで、お気軽にお問い合わせください。
【画像素材について】
学生インターンの活動風景、こどもアイデア会議の様子、過去開催時の写真など、取材用画像を提供できます。


